第32章 眠り王子に祝福の…を
信玄様の少し乾いた唇にキスをする。
軽く押し付けた唇に、柔らかな信玄様の体温を感じた。
身を起して顔を覗き込む。
「ふふ、覚えていないって言っても知りません。一度だけですから。
眠り王子様、早くお目覚めくださいね。
私なんかのキスじゃ、祝福もなにもあったものじゃないですけど」
信玄様の心を救えるのなら応えたかったという気持ちにやっとケリをつけられた。
自己満足だと言われればそうだけど、それでもいい。
たった一人で生死をかけた手術に挑んだ人に、やれることをしてあげたい。
「そろそろ謙信様達を呼んできますね」
布団の上に出ていた手を中に入れてあげようと持ち上げると、信玄様の指先がピクンと動いた。
「っ!信玄様…?」
咄嗟に顔を見て、声をかける。
信玄様の唇がわずかに動いた。