第32章 眠り王子に祝福の…を
3人を見送って洗濯物をたたみにかかる。
「はぁ、こうして一人の時間があるって、ありがたいなぁ」
仕事以外は四六時中子供と一緒にいる生活を続けていたせいか、ほんの少しの時間とはいえ非常にありがたい。
謙信様は『やることがない』といって、私が家を留守にしている間、家事をこなしてくれる。
本来城主をしている方に掃除諸々お願いするのは気が引けたけど、『退屈すぎて死んでしまう。俺から仕事を奪うな』と言われてしまっては引き下がるしかなかった。
器用になんでもこなす謙信様だけど、洗濯だけは下着を干したり畳んだりされるのはどうしても抵抗があったので私が担当している。
誰も居ない静寂の中、せっせと洗濯物を畳んでいるとスマホが着信を知らせて振動した。
(佐助君かな?)
画面を見ると信玄様が入院している病院からだった。
「っ、何かあったのかな……はい、もしもし」
看護師「〇〇病院ですが、三雲さんの奥様でしょうか?」
配偶者と装っていた方が緊急時に都合が良いと佐助君に言われ、病院の人達には『信玄様の内縁の妻』で通していた。
偽りとはいえ信玄様の妻という肩書に謙信様はとても不満そうにしていたけど……
「はい、あの…何か?」
悪い報せなのだろうかと心臓が嫌な音を立てる。
看護師「つい先程の話なんですけど、三雲さんの指が動いて、うわ言を漏らしたんです。
ご都合がよろしければ近いうちにいらっしゃって三雲さんに声をかけてもらえませんか?」
「わかりました。ご連絡ありがとうございます!」
目が覚める兆候なのかもしれない。
気分が舞い上がり、急いで自分と謙信様のスケジュールを確認する。
(よし、急ぎの仕事もないし明日なら行ける!)
仕事場や保育園に明日のお休みの連絡をいれ、急いで病院へ行く仕度をする。
佐助君にも連絡を入れたけど明日は都合が悪いとのことで、私達だけで病院にいくことになった。