第32章 眠り王子に祝福の…を
(体が鈍る…か。そうだ!)
「謙信様、近所に剣道の道場があるんですが行ってみますか?」
謙信「けんどう?」
耳慣れないのかおうむ返しに聞かれ、近くにいた龍輝がぴょんぴょん跳ねた。
龍輝「知ってる!めーん!ってやつでしょ?」
謙信「なんだ、それは?」
謙信様がはてなマークを浮かべ首を傾げた。
「ふふふ、龍輝よく知ってるね。今日は特に予定もありませんし、行ってみましょうか」
自宅から歩いて5分もしないところに道場はあり、近づくにつれて子供の声が賑やかに聞こえてきた。
「子供達の稽古時間のようですね。剣道は竹刀で稽古するんです。
ただ謙信様の相手になる方は恐らくというか絶対居ないでしょうから、日々の鍛錬の場所に使わせてもらうのはいかがかなと。家の庭ではやりにくいでしょうから」
佐助君と木刀で鍛錬していた時に見ていたけれど、物干しや植木があって思う存分刀を振るえない上、龍輝や結鈴が近くを走り回るので非常にやりにくそうな顔をしていた。
謙信「別に俺は庭で構わんが?限られた条件で鍛錬を積むのも中々良いものだ。
戦において、どのような状況でも戦えなくては話にならんからな」
「そうですか…?」
引き返そうかなと足を止めると、道場から見知った顔が現れた。
?「あれ、舞がここに来るなんて珍しいね!」
「絵美!久しぶり。ちょっとだけ見学にきただけなの。
謙信様、彼女は私の幼馴染です」
剣道着を着て駆け寄ってくる絵美に手を振る。
絵美「龍輝と結鈴も久しぶりだね~。おっきくなったね!
えっと、そちらの方は?」
子供達の頭をワシワシと荒っぽく撫で、絵美の目は謙信様に向けられた。
謙信「舞の夫だ」
相手が女性のせいか少々煩わしそう表情をしている。
絵美「えっ!?舞、良かったじゃん!やっと長期出張から帰ってきてくれたんだね~。
ていうか超イケメンすぎてびっくりしたんだけど」
絵美は謙信様の雰囲気にあてられることなく底抜けに明るい顔で笑った。