第32章 眠り王子に祝福の…を
謙信「温かいなお前は…」
「わっ」
あっという間に膝の上に乗せられ向かい合う形になる。
日帰りの予定だったのでなんの準備もなく、寝間着がわりにバスローブを着ていたので太ももが露わになった。
「わわわ、謙信様、この体勢はちょっと恥ずかしいんですけど」
バスローブの裾を引っ張って隠そうとしても、直ぐにはだけてしまう。
謙信「気にするな」
謙信様は言葉通り気にすることなく私の温もりを確かめるように抱きしめ続けた。
(甘えてくださってるのかな)
恥ずかしがるのはやめて謙信様の頭を包み込むように抱きしめた。
「信玄様は起きてくださると思います。病という敵と戦い続けて、今はちょっと疲れて寝てるだけです。
戦士の休息…そう思いましょう?」
腕の中で謙信様の体がピクリと動いた。
「さっき月見をしながら思ったんです。
幸村なら信玄様が目を覚ますまで信じて待つと思うんです。
私は幸村の代わりに信玄様の傍についていてあげたいと思います」
一旦体を離して謙信様を覗き見ると美しい二色の瞳とパッチリ目が合った。
間接照明の淡い光が映り込み、温かみのある綺麗な色だ。
謙信様の白い頬に手を添えてにっこりと微笑む。
「とは言っても私は仕事があって龍輝と結鈴も居るので週末限定です。
平日は謙信様と佐助君が、幸村の代わりの、私の代わりで傍についていてあげてくださいね」
謙信様の顔がみるみる不機嫌なものになっていく。
謙信「なにっ!?それは俺をここに置いて帰るということか?」
仄暗い雰囲気を漂わせていた謙信様はどこへやら、あっという間に拗ねた顔になった。