第32章 眠り王子に祝福の…を
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手術日の朝、病室に行くと信玄様がいつもと変わらない様子で迎えてくれた。
信玄「謙信、姫、遠いところ悪いな」
「いいえ、気にしないでください。着替えとタオル、新しい物を持ってきたので置いておきますね」
手術後は回復具合にもよるけれど1週間~10日入院して、あとは通院になるそうだ。
龍輝「信玄様、これ持ってきたんだ」
信玄様の手に持ってきた物を乗せた。
赤い着物を着て、パッチリとした意志の強そうな茶色の瞳。
口の端っこがちょっぴりあがっている……
信玄・佐助「「……幸?」」
二人の声が揃って結鈴が嬉しそうに笑った。
結鈴「ママが作ったお人形なの。ほら、佐助君とパパと信玄様も持ってきたよ」
忍び装束を纏った佐助君と、着物を着流してお饅頭をもった信玄様、刀を持って笑っている謙信様の人形をリュックから出して次々手渡していく。
佐助「驚いたな。それぞれ特徴を掴んでいて、そっくりだ」
佐助君が自分の人形を持ち上げ、裏返して見ている。
龍輝「幸村は信玄様の家来なんでしょ?だから連れてきたんだ~」
得意げに笑う龍輝に、
結鈴「皆一緒だから寂しくないでしょ?」
そう言って枕元に人形を並べ始める結鈴。
信玄「ああ、ありがとう」
信玄様は幸村の人形を眺め、頬を緩めた。
信玄「しかし幸はなんで腰に白い蛇なんか巻いているんだ?」
謙信「………」
「それは謙信様と私の秘密ということで……ふふ」
くすくすと笑う私の隣で謙信様が気まずそうに佇んでいる。
信玄「ん?謙信が関係あるのか?
……幸に何も言わずに出てきたからな、怒ってるだろうな」
佐助「ワームホールが開けば信玄様も行くだろうって幸村は勘づいていましたよ。
多分今頃、ブツブツ言いながら信玄様を待っていると思います」
怒り口調で『早く帰ってきてくださいよ、信玄様!』そう言っている光景が浮かび、私はウンウンと頷いて同意した。
信玄「白蛇は神の使いって言うからな。幸のもとに神の加護があると良いな…。
結鈴、龍輝ありがとう。少しの間貸してくれるか?」
結鈴・龍輝「「もちろん!」」