第32章 眠り王子に祝福の…を
駅の駐車場に車を止め、見送るために私も車から降りた。
佐助「紹介状を受け取ったらすぐ向かうつもりだけど、舞さん達の方が先に病院に着くと思う。
紹介状がなくても話は通してあるから、このメモを受付に出してくれれば大丈夫だ」
メモを見ると、大学院の名前と教授のものと思われる名前と連絡先が書いてあった。
佐助「それと入院する際は信玄様の名前は使わず『三雲 信』(みくも しん)と名乗ってくれ。
信玄様には伝えてある。俺の親戚ということになっているんだ」
「うん、わかった。それと入院や手術代のことなんだけど…」
なんの病気かわからないけれど、自費診療となるとそう安くない医療費の請求がくるはず。
全額は無理かもしれないけれど貯金を足しにしてほしいと申し出ようと思っていた。
佐助「お金は心配要らない。ちゃんと手は打ってある」
佐助君はワームホールの計算に明け暮れていた頃、信玄様を連れていくだろうことを見越して現代で売れば価値があるものを準備していたらしい。
佐助「紹介状を受け取りに行ったついでに、戦国時代から持ってきた物をお金に換える手配をしてくる。
歴史的にも価値があるものだから、そっち方面に造詣が深い人を教授に紹介してもらうつもりだ」
抜かりない姿勢に感心する。
「あいかわらず佐助君は凄いなぁ。
じゃあ実際お金が手に入るまでは私の方でサポートするから心配しないで。あとこれ…」
手のひらサイズのお財布を佐助君に渡す。
「佐助君は現金を持っていないでしょ?カードがあれば大丈夫だと思うけど念のために持って行って。
もし使わなかったら京都のお土産を買ってきてくれる?皆で食べたいから」
佐助「舞さんは相変わらず優しい人だな」
「佐助君の方が優しいよ。謙信様が酷い状態の時に頑張ってくれたでしょう?一生頭があがらないよ。ありがとう、佐助君」
バタバタして言いそびれていたお礼をすると、佐助君はクスっと笑った。
佐助「謙信様のためだけじゃなく、俺のためでもあったんだ。
もう一度舞さんに会いたかったんだ。君のピンチに気づいてあげられなかったし、お別れもできなかったから」
「フフ、ありがとう」
佐助「なるべく早く病院へ向かうよ」
佐助君は颯爽と駆けていき、すぐに駅の中へ姿を消した。