第32章 眠り王子に祝福の…を
(姫目線)
無事に仲直りできた私達は信玄様の病気を治すために急ピッチで動いた。
佐助君はこちらで目を覚ましてすぐに大学院の教授に電話で相談をもちかけていて、信玄様を受け入れてくれる病院を紹介してもらっていた。
電話で症状を伝えると『緊急性あり』と判断され、すぐに病院に連れてきて欲しいと言われていたそうだ。
謙信様との仲違いを解消するために1日費やしてしまったことを申し訳なく思う。
佐助「電話だけだと失礼だから教授に直接挨拶に行って、紹介状をもらってくるよ。舞さんは信玄様を病院まで連れて行ってくれる?病院で落ち合おう」
教授が紹介してくれた病院は車で2時間程の場所だったので快く引き受けた。
入院に必要なものを鞄にまとめて皆を車に乗せる。
「信玄様は車酔いしにくい助手席に座って下さいね。佐助君、3列目に座ってね。
結鈴、龍輝、ベルト締めた?」
2列目シートには結鈴(ゆり)と龍輝(たつき)が座り、その真ん中に謙信様が狭そうに座っている。
「……謙信様、一番後ろの席の方が広々座れますよ?」
3列シートの車だというのに謙信様は頑として2列目に居座った。
謙信「良い。いざという時に信玄の手からお前を守らねばならない」
「ふふ、信玄様はそんなことしませんよ、ね?」
慣れない手つきでシートベルトを締めようとしている信玄様に同意を求める。
信玄様は手を留めて意味ありげなウインクした。