第31章 パパなんて嫌い
「えっと……皆、仲良くなって良かったです…ね?」
リビングに二人の声が高く響き渡る。チラリと謙信様を見ると、
(うわぁ…どうしよう、怒ってる。凄く…信玄様、佐助君~)
察して欲しいと目で訴えるけど、二人とも気づいてくれない。
いや、本当は気づいているのかもしれないけど。
「け、謙信様。これからずっと一緒ですから、その、ちょっとだけ信玄様と佐助君と交流を持たせて…」
謙信「くっ、俺としたことが信玄と佐助に遅れをとるとは…」
「……聞いてます?」
謙信様は二人を取り戻したくて仕方がないらしい。
「もう仕方のない方ですね」
昨夜も同じセリフを言ったな、と笑いがこみ上げてくる。
(皆が遊んでいるうちにご飯でも作ろうかな)
キッチンへ向かおうとして背後から謙信様に手を引っ張られた。
謙信「お前まで俺から離れるのか?」
「え?ふふ、食事の用意をしようとしただけです。
そんな寂しそうな顔しないでください」
振り返るとすぐ近くに謙信様の整った顔があってドギマギする。
(あ、相変わらず素敵……)
なんてことを考えながら見惚れてしまう。
謙信「俺に黙ってどこにも行くな」
後ろからギュウと抱きしめられた。
(え?キッチン、すぐそこなのに断らなきゃいけないの?)
心の中で突っ込みをいれてる間に、佐助君と話していた龍輝が私達を見て嬉々として声を上げた。
龍輝「あーーーーーーーー!パパが、ママをぎゅーしてる!」
結鈴「わーーー、いいな。結鈴もギューして欲しい!」
信玄「ん?結鈴は抱きしめて欲しいのか?どれ、じゃあ俺が…」
謙信様の腕が私からバっと離れ、凄い勢いで信玄様のところに向かった。
謙信「信玄!貴様、それ以上結鈴に手を出したらタダではすまぬと思えっ!」
帯刀していたなら刀を抜きそうな勢いで謙信様が凄む。
信玄「やれやれ、結鈴の父は怖いなあ?また遊びにおいで」
信玄様はお姫様抱っこしていた結鈴を謙信様に手渡した。
結鈴「信玄様、優しくて大きくて、いい匂い。大好き」
謙信「っ……」