第31章 パパなんて嫌い
(ただ呼び方が私と同じなのはどうしようって思うけど…)
年上の佐助君に対して『君』は良くないな。と考えながらリビングに入った。
ソファに座りTVを見ていた信玄様がゆったりと立ち上がったのが見え、続いて『わぁ、本物の信玄様だぁ』という結鈴の声が聞こえた。
信玄様は結鈴を見てにこやかに微笑んだ。
信玄「謙信、早速娘を泣かせたのか?泣き声がしたから随分と心配したが…杞憂のようだったな。
小さな姫君、名を教えてくれないか?」
結鈴「…姫?」
結鈴がポカンと口を開けている。
謙信「佐助共々斬り伏せてくれようか。俺が子供相手に何かするわけがあるまい。
結鈴、信玄には近づくなよ。こいつはすぐ女を誑かす」
結鈴「パパ、たぶら…て何?」
「わわわ、まだそんな難しい言葉を覚えなくていいよ。
ほ、ほら、ご挨拶して」
龍輝と結鈴を信玄様と佐助君の前に立たせた。
龍輝「甘い物が大好きな信玄様と…」
結鈴「まきびしが大好きな佐助君だぁ…」
二人は自己紹介を忘れて目を輝かせている。人形そっくりの人間が現れて感動している。
謙信「龍輝と結鈴は何故信玄と佐助を知っているんだ?」
訝し気に問われ、
「え、えーと、私が作った人形がありまして…性格や趣味も私が話して聞かせていたんです」
謙信「ほう、それは面白い。あとで見せてもらおうか。
お前が作ったというならさぞかし良く出来ているのだろうな」
「は、はい」
(安土メンバーは隠すべき?)
ふと過った考えはひとまずスルーして、二人に挨拶をさせた。
信玄「俺は武田信玄だ、よろしくな。結鈴は舞に似て可愛いらしいな。
姫、小さい姫を抱っこしていいか?」
「いいです…わっ?」
謙信「駄目だ」
謙信様がズイと二人の前に出て立ちふさがった。
信玄「いいじゃないか、ちょっとくらい」
佐助「謙信様、俺もお二人をよく見たいのですが」
謙信「駄目だ、減る」
信玄・佐助「「……」」