第30章 仲直り
命名 龍輝
命名 結鈴
「謙信様は越後の龍と呼ばれていたので一文字頂きました。
『輝』という字は、これから歩む道が光り輝くようにと使いましたが、幸村の城から発掘された石碑の件があって謙信様の生涯を調べたのですが、謙信様は『輝虎』様とも名乗られていたのですね。
そのことは全く知りませんでしたので、びっくりしました」
謙信様は静かに頷いた。
謙信「そうだ。俺は将軍よりその字を賜り、そう名乗っていた。
何故か最近は謙信と呼ばれることが多かったがな」
「そうだったんですね。こちらに帰ってきてからは謙信様の生涯を知るのが怖くてわざと調べないようにしていましたし、もともと歴史に詳しくなかったので輝虎様という名前を知らなくて…。偶然ですが謙信様より二文字頂いていました」
謙信様から二文字貰っていたことに気が付いた時は心躍るような気持ちだった。
「結鈴の由来は、謙信様から最後に頂いたのものが鈴だったので、そこから一文字取りました。
『結』はたくさんの縁に恵まれて育って欲しいという思いと、私と謙信様が結ばれたからこそ誕生した命、という意味で使いました」
住職が書いてくれた文字をボンヤリと眺める。
「あのお寺で謙信様から頂いた鈴を出した時、ご住職が寺に伝わる言い伝えに気づいてくださって手紙を受け取る事ができました。
あの鈴は本当に、私達を結んでくれました。そう感じた時『結鈴』と名付けて本当に良かったと思いました」
謙信「舞、お前は本当に愛おしいな」
謙信様は命名書をテーブルに置き、少しひんやりする手で私の両頬を包んだ。