第30章 仲直り
謙信「名の由来にまで俺への想いがこめられている。礼を言っても伝えきれん。
もう一度謝らせてくれ。お前の愛を疑ったりして悪かった。痛かっただろう?」
叩かれた頬を優しく撫でられる。それが心地良くてうっとりと目を閉じた。
心の中を覗いてみても、もう怯えも恐怖もない。
今あるのは底なしに湧き出てくる幸福感だけだ。
「もう痛くないです。こうして謙信様と仲直りできたので平気です。
それに謙信様はあんなに怒っていらっしゃったのに…痛くないように叩いてくれたのでしょう?」
派手な音はしたけど、頬が赤くなったり腫れたりはしなかった。
謙信様は眉間に皺を寄せた。
謙信「本来男に守られるべき女人に手をあげるなど俺の信条に反する行為だ。
それをするからにはなるべく傷つけぬよう加減はした」
(ああ、そうだった。謙信様はなんだかんだ女性を尊重してくれる方だった)
忘れていたわけじゃないけど思い出すのと直に言葉で聞くのとは違う。
こういうところがあったと懐かしく思う。
「でも今度怒る時はちゃんと理由を言ってから怒ってくださいね?」
謙信「ああ、約束だ。今回ほど後悔したことはない。
俺は二度とお前に手をあげないし、気に病むことがあれば必ずお前に聞いてから怒ることにする」
「ふふっ、そうしてくださるとありがたいです。じゃあ他のアルバムも見ましょうか!」
そうして私と謙信様は5年という足跡を追うようにアルバムを眺め、夜遅くまで語り合った。