第30章 仲直り
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愛の言葉を幾度も交わし、どれほど口づけを繰り返しても満たされなかった。
謙信様が体重をかけてきたのでもつれ合うようにしてソファに倒れこんだ。
ドサッ
その反動でほんの数秒体が離れた。
(っ、離れたくない)
謙信様の背中に回した腕に力を入れて引き寄せる。謙信様もそれに応えてくれて二人の体は隙間なくピッタリと合わさった。
「ふふ、嬉しいです、謙信様。ずっとこうしていたいです」
謙信「俺はこのままでは嫌だぞ」
「えっ!?」
てっきり同意してくれるかと思ったのに謙信様は少し開いた唇から苦しそうに吐息を漏らした。
額と額がコツンと合わさった。
「どれほど言葉を交わしても口づけても足りない。舞が欲しい。
口づけよりも深く、舞と繋がりたい。お前に熱を与え、お前の熱を感じたい」
「っ!」
こみあげる熱量を持て余しているような、そんな切ない顔をしていた。
まっすぐに求められて全身がカッと熱くなった。
応えたい。そう思うけど私はため息をついた。
「申し訳ありません。今日は、というか7日程駄目です。
さっきお風呂あがりに月のものがきてしまったので」
謙信様は数回瞬きを繰り返し、やがて至極残念そうな顔をした。
謙信「仲違いをしてる場合ではなかった。朝のうちにお前を抱いておくんだった」
私の肩口に顔をうずめながら謙信様は呟いた。
サラサラの髪が首にあたってくすぐったい。
「ふふっ、謙信様ったら」
子供みたいな言動に笑いがこみ上げてくる。
謙信「笑ったな?月のものが終わった暁には覚えていろよ。良い声で啼かせてやる」
面白くなさそうな顔をして謙信様が首筋を舐めては甘噛みした。
ちょっといじけた猫みたいだ。
「っ!?や、あの、佐助君や信玄様も居ますし、その…ほら、ゆりとたつきも居るのでお手柔らかにお願いします」
謙信「手加減する気はない。せいぜい声を我慢する鍛錬でもしておけ」
「どんな鍛錬ですか!」
呆れ半分、嬉しい半分で鋭い突っ込みを入れてしまう。
謙信様はくつくつと笑っていた。
いつもの調子に戻った謙信様はちょっぴり意地悪で、可愛くて、かっこいい。