第30章 仲直り
謙信様の綺麗な顔が角度を変えて近づいてきて、自然に目を瞑った。
期待で胸を高鳴らせて――何故か唇は降りてこなかった。
「?」
薄眼を開けると謙信様がジッとこちらを見ていた。
謙信「返事をせぬとお前が欲しがっているものはやらんぞ」
少し意地悪を滲ませ謙信様が薄く笑った。
「わわわわわ!?返事はもちろん『はい』です。
それ以外ないって、謙信様ならおわかりでしょう?」
(やだ!キス待ちの顔を見られてたなんて!)
恥ずかしさのあまり目を逸らし口を尖らせた。
謙信様が笑いをこぼし、もう一度私を上向かせた。
謙信「わかってはいるが、その愛らしい口と声で返事を聞きたかったのだ」
にっと笑んだ顔がとても幸せそうだ。
「んっ……」
柔らかく口づけてきた唇は直ぐに離れ、おでこ、両瞼、こめかみ、両頬、鼻、口元、あご、耳たぶとキスの雨が落とされた。
時々小さくチュッという音がする。
触れてくる口づけの感触は柔らかく、けれど鋭い感覚を呼び起こした。
(キスされた場所が熱い)
一度熱くなった場所は冷める事を知らず、それどころか熱の面積を広げていく。
「ん、謙信さ…ま…」
一生会えないと思っていた人に包まれ、たくさん与えられる口づけに喜びがジワジワと湧き上がってきた。
謙信「愛している。もう二度と離さぬ」
唇が離れ、さっきよりも熱がこもった眼差しで囁かれた。
謙信「この身をもって味わった。俺はお前が居なければ息もできぬほどに、愛している」
「私も、この5年間ずっとあなただけを想っていました。
愛しています。大好きです、謙信様。
今度こそあなたと一緒に幸せになりたいです!」
背伸びして謙信様の頬に口づけをした。
不意打ちの口づけに謙信様は驚いて瞬いていたけれど、満面の笑みを浮かべ、何度も私に口づけを落とした。