第30章 仲直り
謙信「お前を守ると言ったのに何一つ守ってやれなかった」
慌てて謙信様の腕の中で首を振った。
「そんなにご自分を責めないでください。
謙信様と最後まで結ばれたいと望んだのは私も一緒です!
私が欲しいと言ったのだから責任は私にあります。
安土に残していかれたのは私を思ってのことだと知っていますし、それを恨んだことなどありません。
それに守ってやれなかったとおっしゃいますが、ちゃんと守ってくださいました」
謙信「何?それはどういう…」
謙信様の腕が緩み、至近距離で見つめ合った。
色違いの目は記憶にあるものよりずっと綺麗だった。
「先程は言い忘れてしまいましたが、現代へ戻った時、私はとあるお寺に降り立ちました」
謙信「寺…?本能寺跡ではなかったのか?」
「ええ。謙信様とお酒を飲んだ帰りに立ち寄った、あのお寺です。
寺のご住職に介抱され、そこで水を一杯もらいました。
幾日も水を飲んでいなかった私は脱水状態を起こしていました。
医師が言うにはそこで水を飲まなければ治療が間に合わなかったかもしれないということでした。
あの廃寺を再建したのは……謙信様でしょう?」
喜色をあらわに謙信様は言った。
謙信「あの寺は残ったのか!お前との思い出の地で500年後に残りそうだったのはあの寺だけだった。
お前が俺を想ってくれるなら気づいてくれるやもしれぬと再建の指示を出した。
そうか、舞はあそこに降り立ったのか」
「ええ。お寺を残していただき、ありがとうございました。
お寺が無ければ私は助からなかったかもしれません。謙信様はちゃんと守ってくださいました。
……池の彫刻がとても素晴らしくて、一目で謙信様と私を表したものだとわかりました」
謙信様は嬉しそうに目を細めた。
謙信「落ち着いたら寺へ案内してくれるか?再建の指示を出したが完成した姿を見ていない」
「そうなんですか?あっ、半年ですもんね」
私が居なくなって直ぐに動いたとしてもお寺の建設は半年では完成しないだろう。
謙信様は小さく頷いた。