第30章 仲直り
かくんと体の力が抜けた。
もうその口から二度と愛の言葉は紡がれないと思っていた。
抱き締めてくれることも見つめてくれることもないだろうと。
越えられないと諦めていた溝が埋まった瞬間だった。
(何も変わってなかった)
私も謙信様も、お互いを想い、愛していた。
時がズレて誤解が生じただけ。
やせ細っていても力強い腕に身を委ねた。
(謙信様……)
朝は再会の喜びを味わえなかった分、今、怒涛のように喜びが押し寄せてきた。
本当に追いかけてきてくださった
本当にここに謙信様がいる
まだ……私のことを忘れず、愛してくださっている
嬉しい
もう、一人じゃない
「っ、~~~~~」
嬉しくて涙が溢れた。
ゆりとたつきが居るから一人じゃなかったけど、成長を見守り慈しむ存在は私しかいなくて、ずっと孤独だった。
安心する腕に包まれて温もりを味わっていると、謙信様の声が降ってきた。
謙信「この腕はお前を抱くために
この刀はお前を守るために
この手はお前を愛でるために
この目はお前をみつめるためにある。
お前の傍に居なければ俺の腕も刀も手もっ!全て意味をなさないっ!
会えてよかった。会いたかった、舞。
もう一生会えぬと思っていた」
腕の中から見上げると、謙信様の目にほんの少し涙が浮かんでいるのが見えた。