第29章 時のイタズラ
信玄「時のイタズラか…」
佐助「幸村に依頼した石碑が盗まれ、俺のメッセージに気づいたのが最近だったというも大きいかもしれません。
ワームホールを無理やり開かせるためには舞さんの協力が必要だったので」
「そのことなんだけど私にワームホールを開かせる力なんて本当にあるのかな」
佐助「本当にあるのかなんて、あったから俺達はこうしてここに来られたんだ。
君は七夕の日、謙信様に会えるようお願いしなかった?」
「なんで知ってるの!?」
七夕が終わってもそのままにしてあった笹飾りをチラリと見る。
ゆりとたつきの笹の間で、私が書いた短冊がぶらさがっている。
佐助「ワームホールの発生確率がその日だけ跳ね上がったんだよ。
もしかしたら舞さんが現代で祈ってくれたおかげじゃないかって幸村と話していたんだ」
佐助君が目をキラキラさせている。
佐助「現代科学で証明できないかもしれないけど、今度君の体を調べたい」
「えっ!?」
『体を調べたい』なんてストレートな表現に両手で体を隠した。
佐助「えっと、誤解させてごめん。採血とか、そういうことだ。
ワームホールは自然現象だと思っていたのに人為的に発生させられるとしたら新たな発見だ」
「ああ、そういうことね。採血くらいなら協力するよ。フフ、佐助君は相変わらず面白い人だね」
笑っていると、佐助君はこちらを眩しそうに見ていった。
佐助「一瞬でも君を疑ってしまったことを謝りたい。
ごめん。君がまた笑ってくれて嬉しい」
眼鏡の奥にあたたかな光を見て私も微笑んだ。