第1章 触れた髪
佐助君が説明したけれど3人とも理解したようなしないような難しい顔をしていた。
少しの沈黙の後、幸が首をかしげた。
幸「その『抗体』ができたかどうかっていうのはどうやってわかるんだ?
舞の口ぶりからすると、蜂毒に対する『抗体ができている』のを知ってたんだろ?」
佐助「ああ、それは血を抜いて調べる」
佐助君が答えた瞬間、三人は目を見張って私を見た。
幸「血を…抜くっ!?」
信玄「おいおい、その美しい天女から生き血を抜いたのか?どうやって?」
謙信「酔狂な…」
佐助「ああ、言葉が足りませんでした。血を抜くと言っても少量です。
空洞になっている細い針を腕の血管に刺して吸い取る感じで採ります。
あとは専門的なのでどうやって調べるかはわかりませんが…」
おそらく機械にかけたり試薬で調べるんだろうけど、この時代の人達にはそれを言えず、佐助君が言葉を濁したのだろう。
謙信「空洞になっている針…」
信玄「吸い取る…」
幸「こ、こえぇ!なんだそれ?」
普段、戦に出れば血を見慣れているであろう3人が顔をしかめている。
(ふふ、ただの採血なんだけど。でも知らない人からしてみれば怖いんだろうな)
「と、とにかく蜂に刺されなくて済んだのは謙信様のおかげです。
命を助けて頂いてありがとうございました」
動揺が声に表れて震えてしまったけれど、なんとか謙信様にお礼を言えた。