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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第1章 触れた髪


幸「謙信様、こんな所で刀を振り回さないでくださいよ」


幸さんがそう言ったけれど、さっきの謙信様の立ち回りは一瞬だったので誰も気づいていない。


佐助「舞さん、大丈夫?」


言葉を発しない私を気遣い、佐助君が声をかけてくれた。
そこで我に返った私は、謙信様から佐助くんに視線をうつした。
佐助君の顔を見たらなんだか急に安心して、震える両手で彼の着物をギュッと握った。


「っ、さ、佐助君…」


心配させてしまうから『止まって』と思うのに、震えは止まらなかった。


「こ、怖かった。とてもっ…」


私の目に涙が浮かんでいるのを見て、佐助君が驚いているのがわかった。


佐助「舞さん、大丈夫だ。謙信様が刀を振り回すのはいつもの事だ」

幸「っ!?泣いてんのか?そんなにびっくりしたのかよ」

信玄「ほら、謙信。姫が泣いている。謝ってこい」

謙信「……」


謙信様は眉間に皺を寄せて、面倒臭そうにこちらを見ている。
私は慌てて首を振った。皆誤解をしている。


「いえ、驚いたのは確かですけど、怖かったのは謙信様にではなく、蜂です。
 以前蜂に刺された事があるんです。今度刺されたらショックを起こして、最悪だと死んでしまうんです」


佐助君は目を見開いて、


佐助「そうか、アナキラフィシーショックか!」

「うん、だ、だから蜂がこっちに飛んできた時に凄く怖くて…っ」


謙信様が蜂を退治してくれなかったらと思うと、体がブルッと震える。


佐助「もう大丈夫だから、安心して」


佐助くんが私の背をさすってくれた。
大きな手が上下する度に、少しずつ落ち着いていくのがわかる。


信玄「しょっ苦…?」

謙信「穴…きら?しょっくとはなんだ?」

幸「おい、佐助。人前でいちゃつくんじゃねー」


戸惑う三人の前で、佐助君はいつもと変わらない態度で淡々と答えていく。


佐助「舞さんは以前蜂に刺されたことがあって、その時に体内で蜂毒に対する抗体ができたんです。
 抗体というのは体内から異物を排除する働きがありますが、アナキラフィシーショックというのは二度目に刺された際、抗体が過剰に反応してしまい、体内にある他の物質と結びついて、蕁麻疹、呼吸困難、意識障害といった症状を短時間のうちに引き起こします。
 最悪、死に至ります」

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