第29章 時のイタズラ
(謙信目線)
俺の直感が舞に咎はないといっている
舞、すまない…お前を傷つけた
傷ひとつ負わせたくないというのは身体だけではない
心にさえ負って欲しくなかったのに
俺自身が傷をつけた
この部屋にかかっている着物は…俺のものだろう?
どれも俺の嗜好に合っている
おそらく『さいず』も合っているだろう
冷静になればわかる
戯れで一時交わった男に着物は仕立てない
戯れの相手に贈られた反物で着物を仕立てるわけがない
会話に出てきた兎をわざわざ刺繍するわけがない
戯れだったのなら……ワームホールの確率が100%になるわけがない
話も聞かず手をあげ、罵った
なんと愚かな行いをしたのか
お前との間に底なしの溝を作ってしまったのは俺だ
この溝は…埋まるだろうか
身勝手だ、愚か者だと罵ってくれてかまわない
言葉が続く限り、お前が許してくれるまで詫びよう
だから頼む
お前の話を聞かせてくれ
真実を知りたい
俺とともに歩んで欲しい……
俺の手を……もう一度とって
もう一度笑い合って
共に生きる道を……選んでくれ