第29章 時のイタズラ
(第三者目線)
佐助「……」
和室に戻った佐助を謙信と信玄が迎えた。
信玄「姫と話せたか?」
謙信は何も言わなかったが佐助を伺うように見ている。
佐助「ええ。娘のゆりさんが今朝の出来事を見て怖がっているそうです。
子供が寝るまで部屋で過ごしてくださいと言われました」
謙信は唇を噛んで頷いた。
佐助「お子さんが寝た後なら時間がとれるそうです。
冷静に話し合いましょう」
さっきの様子を見ても舞が怯えているのは明らかだ。
真実を聞くためにはこちらが冷静になり、話を聞く姿勢をみせなくてはいけない。
そのために佐助は『冷静に』と強めに言った。
信玄「そうだな。怖がらせては相手は何も話してくれない。
わかってるだろう、謙信」
謙信「ああ」
窓ガラスの向こうの日は傾き、橙の空を少しずつ薄闇が覆っていく。
その様を見ながら謙信は返事をした。