第29章 時のイタズラ
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(姫目線)
自宅に到着して、車に子供達を待たせて家に入った。
玄関にある3人分の履物にホッとするのと同時に、もやもやと複雑な感情が膨れ上がった。
「ただいま帰りました」
勇気を出して声をかけたけど、リビングには誰の姿もなかった。
和室に向かうと中から佐助君が出てきた。
佐助「おかえり、舞さん」
「うん、ただいま」
そのあとが続かず沈黙が訪れた。
気まずくて視線を廊下に落とした。
佐助「舞さん、朝はごめん。
少し落ち着いて話をしたいんだけど時間を作ってくれる?」
「うん、子供が寝てからならいいよ」
(それは謙信様も一緒?)
そう聞きたいのに怖くて聞けなかった。
「それでね、ゆりが…娘なんだけど、朝のことを見ちゃって家に入るのを怖がってるの。
申し訳ないんだけど、ゆりが寝るまで部屋に居てくれる?夕飯は部屋に運ぶから…」
佐助「ああ、構わない。その…ごめん。謙信様にかわって謝らせてくれ」
佐助君が痛ましそうに顔を歪めて頭を下げた。
「いいの。もういいよ」
なんだか佐助君と目を合わせるのも辛い。
話を切り上げ、ゆりとたつきを呼びに外へ出た。