第28章 秀吉さんがくれたハンカチ
男「………」
男の人も気のせいか私を見て驚いている。
20歳前後だろう。
若いのに身に纏う雰囲気がとても落ち着きがあった。
顔つきはとても端正で、優しいラインの目元が女の子にモテそうだ。
キャラメル色の柔らかい髪色に深みのある榛色の瞳。
ただそこに立っているだけなのに、まわりから浮き上がってみえる不思議な存在感があった。
(なんだろう。初めて会うのに、懐かしい感じがする)
何故か嬉しい………凄く。
胸が異常に騒いだ。
(誰?私、この人にどこかで…)
初めて会ったのは間違いないのに、どこかで会ったことがある気がした。
男「…お姉さん、次は飛ばされないようにね」
口の端に浮かんだ笑みに優しさが滲み、記憶の中の誰かを彷彿とさせた。
女性の扱いに慣れていそうな口調に我に返った。
「はい、ありがとうございました」
ハンカチを受け取って背を向ける。
ひき寄せられたものが離れたような不思議な感じがしたけど保育園の迎えの時間が迫っている。
ハンカチをバッグに仕舞いこみ、駐車場へと向かった。