第28章 秀吉さんがくれたハンカチ
(第三者目線)
男「あの人だ……絶対」
遠ざかっていく舞の後ろ姿を男が見つめる。
隣に居た黒髪の男の口がにっと吊り上がった。
黒髪の男「見ただけでわかるのか?」
男「ああ、絶対そうだ。
なんでだろう、初めて会ったのに…『会えて嬉しい』って思ったんだ…」
男は舞の前では取り繕っていた表情を崩した。
片手で口元を覆い、頬がわずかに上気しているのを黒髪の男が面白そうに見ている。
女「私もあの人だと思う」
一緒に居た女も瞬きもせず舞を見つめている。
一見どこにでも居る三人組の男女。
しかし周囲の空気に馴染まない異質な雰囲気が漂っている。
やがて三人は何か言葉を交わしながら、行き交う雑踏の中に消えていった。