第27章 梅干しの蓋
信玄「昨夜天女と会った時、なーんか『熟した』感じがしたんだよ。
醸し出す雰囲気が大人びていておかしいなと思ったんだ。4年経っていたならわかる」
助手席から舞を見た時に感じた違和感。
暗がりのせいかと思っていたが、と信玄は納得している。
謙信「……」
佐助「さすが女性のこととなると信玄様は見てますね」
信玄「ふっ、そりゃあな。謙信が落としてなければ俺が欲しかった女だからな」
悪びれもせず信玄が言う。
佐助「話は変わりますが信玄様と謙信様は舞さんのお子さんの姿を見ましたか」
二人は首を横に振った。
佐助「俺も声だけで姿は見ていませんが、声の幼さから幼稚園児くらいではないかと」
謙信・信玄「「ようちえんじ?」」
信玄と声が揃い、謙信が嫌そうに顔をしかめた。
佐助「あ、すみません。この時代、子供達のほとんどが6歳まで幼稚園又は保育園に通うんです。親の仕事の都合によって0歳から通う子も居ます。
そこで子供同士の集団行動を通して様々な事を学ぶんです。
舞さんの子供もそのくらいの年頃のように感じました」
謙信「ああ、そういえば『保育園』がどうとか言っていた」
謙信は聞きなれない言葉だったので覚えていた。
佐助「なるほど、ではもしかしたら…」
謙信「何かわかったのか?」
佐助は顎にあてていた手を下ろした。
佐助「これから言う事は全て俺の予測です。
お子さんが二人いるのを考慮すると間違っているかもしれませんが聞きますか」
謙信「勿体ぶらずにさっさと話せ」
佐助「期待させて間違っていた時、謙信様に斬られたくありませんから」
謙信は端正な顔をしかめ、低く声を響かせた。
謙信「わかった、たとえ佐助の話が的を外していようと刀を抜かないと約束する」
佐助「ではお話しますからソファにでも座って下さい」
『ソファってなんだ?』といった顔の二人を促して座らせた。