第27章 梅干しの蓋
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気が付いたのは佐助だった。
朝食の後片付けをしている時にキッチンの隅に置かれているガラス製の保存容器に目がいった。
梅干しというよりも梅漬けなのだろう、赤紫蘇の色が移った赤い漬け汁が容器の八分目まである。
蓋に貼られているラベルに年月日が記されていた。
佐助「令和〇×年…」
容器の蓋を食い入るように見ていると信玄が近づいてきた。
信玄「この部屋には用途がわからないものがたくさんあるな。
佐助、あれは時を指しているのか?今度見方を教えてくれ」
信玄が壁掛け時計を指差してそう言ったので佐助は何気なくそちらを見た。
佐助「……っ」
佐助は壁掛け時計の傍にかかっているカレンダーを見て固まった。
カレンダーには令和〇△年と印字されている。
佐助「梅干しを漬けたのは3年前ってことか?」
信玄「どうした、佐助」
佐助「念のため西暦を確認しますので少し待っていて下さい!」
『西暦?』と首を傾げる信玄を無視して、佐助は新聞を探したが見つからず、テレビの電源をつけた。
黒い大きな板に突然人が映し出されて一方的に語り出し、流石の謙信も度肝を抜かれたようだった。
佐助「えっと、こうすればわかるか?」
リモコンを操作して何かしら情報を得たのか、佐助はテレビを消した。
佐助「謙信様、信玄様。俺達が居るこの時代は西暦20××年です。
俺と舞さんが戦国時代に飛ばされた年から5年たっています」
謙信と信玄は黙って先を促した。
佐助「詳しい事は本人に聞かなくてはいけませんが舞さんが戦国時代から現代へ戻ってきて最低でも3年は経っています。
台所にある梅干しの容器に3年前の年月日が書かれていました。
舞さんは戦国時代に約8か月居ました。こちらへ戻ってきた時、現代でも同じだけの月日が流れていた…とすると、戻ってきたのは4年程前なのかもしれません」
信玄「ああ、じゃあ気のせいじゃなかったんだな」
謙信と佐助が声をあげた信玄の方を見ると、妙に納得したという顔をしていた。