第2章 夜を忍ぶ
苦しそうな顔をしている佐助君の顎に手をやり、整った顔の謙信様が伏し目がちに唇を寄せて…
脳裏に浮かんだワンシーンに、思わず顔が赤らんだ。
(うわぁ~~~!絵になりすぎてドキドキする…って、想像してる場合じゃなかった!)
それこそ、そんなこと謙信様にさせる訳にはいかない。
佐助君の顔をジッと見る。
眼鏡を外した顔はいつもより大人っぽくみえる。
意識したことはなかった薄い唇を見ると、胸が高鳴る。
緊急とはいえ、恋人ではない人と唇を合わせるなんて…
(でも佐助君には何度も助けられたもの。今度は私が助ける番!)
ひと思いにやってしまえ!と言わんばかりに薬、水の順に口にいれる。
佐助君の両頬に手を伸ばし、少し上向きにして固定する。
顔を傾けて唇を合わせた。
(唇が熱い…)
自分の唇が冷たく感じる程に、佐助君のそれはとても熱かった。
浅く合わせただけでは水がこぼれてしまったので、思い切って深く口づけた。
錠剤を舌で押しやった時に、佐助君の舌に触れてしまい、恥ずかしさがこみ上げてくる。
ギュッと目を閉じて薬の後に水を送りこむと、佐助君の喉が動いた。
(飲んでくれた!)
それから水分補給を兼ねて、もう一度水を口に含んで口づける。
二回の口づけを終えて体を離すと、佐助君の唇が水で濡れて光っているのが見えた。
手ぬぐいでそれを拭いてあげて、水をこぼして濡らしてしまった夜着も拭いてあげた。
「はあ…」
終わった…と胸をなでおろしたところで視線を感じた。
(ん?)
謙信様の方を見ると視線が合った。
何にも動じず、いつも冷え切った目が…わずかに揺れているような気がした。
(どうしたんだろう?)