第2章 夜を忍ぶ
佐助「う…」
冷えた指先を嫌がるように佐助君の首が逸らされた。
(汗は出てない…。熱が上がっている途中か、上がりっぱなしってとこかな)
「お水を…」
熱が上がっているのは体の中でウイルスと戦っている証拠だけれど、この熱さは危険だ。
(呼びかけても目を覚まさないし、一時的に下げた方が良い…よね)
薬を飲ませようと、水を求めて立ち上がる。
謙信「座っていろ。持ってくる」
謙信様が土間に降りて水甕から水を汲み、湯呑にいれて持ってきてくれた。
「ありがとうございます。謙信様にこんな事をさせてしまってすみません」
一国の城主に水を持ってきてもらうなんて恐縮してしまう。
謙信「何度も担がせておいて、水ぐらいで何を縮こまっている」
(う、図星すぎて何も言えない)
謙信様は預けた薬の箱をよこした。
箱を開け、PTP包装された薬を取り出す。
アルミの銀色が囲炉裏の火を反射してキラキラと光る。
謙信「……」
謙信様は目を細めて見ていたけれど何も言わなかった。
錠剤を三つ取り出し、佐助君に飲ませようとしてハタと気づく。
(意識がないのに、どうやって飲ませれば良いの?)
動きを止めていると謙信様が佐助君の体を起こした。
謙信「寝かせたまま飲ませると水が気道に入る。支えていてやるから飲ませろ」
(飲ませろって、もしかして口移しで!?)
謙信様と佐助君、薬を何度も確認する。
そんな私の様子を見て、謙信様が不審げに眉をひそめた。
謙信「どうした?」
(謙信様は私と佐助君が恋仲だって勘違いしたままだから、口移しで薬を飲ませるなんて平気だと思ってるんだ!)
ここはカミングアウトしなきゃ!と思った途端、
(待って、私ができないとしたら謙信様が飲ませるの……………?)