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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第26章 不義


「私はあなただけを…」


(謙信様だけを愛すると誓ったじゃないですか)


ショックで言葉が続かない。


ついさっきまで再会を喜び合えると思っていたのに、どうしてこんな状況になっているのか。


大好きなのに、変わらず愛しているのに
目の前の愛しい人にひと欠片の愛も伝えられない


何も伝えていないのに、私自身との時間、思い出、存在を、全て拒否された


(なんで?お、しえて……謙信様…)


身体がカタカタと震えた。


?「ママ…」


近くで声がして我に返ると廊下にゆりが立っていた。

驚いた表情をしているのを見ると、もしかしたら頬を叩かれたのを見ていたのかもしれない。

怯えているゆりの姿に、一気に落ち着きを取り戻した。

取り乱した姿を子供に見せちゃいけない。その一心で渦巻く心をどうにか抑えこんだ。


「……すみません。もう出勤の時間なんです。朝食を用意しましたので食べてください。17時には帰ります。
 佐助君、お風呂、トイレ、冷蔵庫、電話、ここにあるものは好きに使っていいから…。
 着替えとかタオルは全部、そこの箪笥の横にある駕籠にいれておいたから、よろしくね」


誰とも目を合わさず能面のような表情をしていただろう。
固い声でそれだけ言ってゆりの手を引いて部屋を後にした。

玄関には靴を履き終えたたつきが退屈そうに待っていて、謙信様と瓜二つの顔を見ると、胸がズキリと痛んだ。

二人を促し車に乗せ、家の敷地を出た途端に、


「………っ」


涙が流れた。


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