第26章 不義
(第三者目線)
信玄「朝か。謙信……どうした?」
謙信のただならぬ気配に信玄が目を覚まし、その声で佐助が目を覚ました。
佐助「ん…おはようございます。どうしましたか」
謙信「どうもこうもないっ、あの女っ……!」
起き抜けに謙信の怒りにあてられ、信玄と佐助は何があったのかさっぱりわからなかった。
ただ舞を『あの女』と言い放った謙信が、腹の底から怒っているのだけはわかった。
今にも襖を蹴破っていきそうな謙信をなだめ、佐助はペットボトルの蓋を開けてコップに水を入れた。
佐助「まず落ち着いてください。状況確認をしましょう。ここがどこかわかりますか?
見たところ無事にタイムスリップできたみたいですが…」
謙信と信玄に水を差しだしながら佐助は聞いた。
信玄「ここは天女の家だ。俺達はこの近くの畑に降り立った。
夜も更けていたが畑の持ち主に掛け合ったら天女を呼んできてくれてな、ここまで車で運んできてもらったんだ」
佐助「舞さんと合流できたんですね、良かった」
謙信「……」
信玄「天女は俺達が来るのを予想していたのか、寝具や夜着も用意してくれていたよ」
佐助は着ていたスウェットに手をやる。サイズはピッタリで新しい物のようだった。
(俺のメッセージに気が付いてくれたんだな)
幸村と試行錯誤した成果が実り、ホッとする。
……が、喜びを噛みしめていられないのは謙信の様子だ。
さっきからどうも様子がおかしい。