第25章 3人で…
細かい雨粒が辺り一帯に降り注ぐ。
佐助「!!いつの間に雨雲が!?」
佐助は荷物を背負って二人の手を握った。
佐助「間もなくです。ワームホールが開きますっ」
ひゅうと強い風が吹き付け、3人の身体をすり抜けて体温を奪っていく。
頭上の雨雲がゴゴゴと不気味な音をたてて渦を巻き始め、謙信はその様子を見ながら叫んだ。
謙信「信玄!どうせ死ぬならもう少し生きていられるだろう。そのくらいの気概、見せてみろっ!」
激しくなる雨風の中、それにかき消されない謙信の力強い声に信玄が笑った。
信玄「お前……ほんと無茶苦茶だな」
佐助「謙信様が無茶苦茶なのはいつもですが今だけはその無茶をきいてください、信玄様!」
バケツをひっくり返したような雨が3人に降り注ぐ。
雷に打たれた大木が燃え崩れてゆっくり倒れた。
ズシーンという音とともに震動が地面をつたって三人に届く。
佐助「きたっ!」
視界がグニャリと歪んだ。
佐助「謙信様っ!信玄様っ!離れないようにしてくださいっ!」
佐助は二人の肩に手を回して引き寄せた。
フワ
謙信「……っ!」
信玄「これがワームホール…」
重力がなくなった空間で3人の足が心もとなく揺れる。
謙信も佐助と信玄に肩を回し、3人で円陣を組んでいるようだった。
バチバチ
不穏な音に目を向けると無重力の空間に火花が散っている。
佐助「プラズマが大量に発生しているっ…!」
佐助が驚きの声をあげるのと同時にどちらからともつかない強い風にあおられた。
「「「っっっ」」」
三人を引き裂くかのように強い風だった。
謙信「このような風で弄ぼうとは小癪な」
謙信は信玄をかばうように強く引き寄せ、その二人をかばうように佐助が覆いかぶさる。
着物や羽織の裾が風をはらんでバタバタと肌を打ち付けた。
佐助「やっぱり以前とは違うっ……!」
ワームホールに飛び込んでからの時間も以前より長い。
佐助は弱った二人をかばいながら周囲を観察しようとしたが、ひどい風で目を開けていられない。
ワームホールから出られないのではと不安がよぎった時、すぐ近くで発生したプラズマがバチバチと音をたてて襲い掛かってきた。
佐助「っ!」
避ける暇もなくそれに触れ3人は意識を失った。