第25章 3人で…
休んでいた謙信もすぐさま水筒を持ってきた。
血を吐いてなお咳き込みが止まらず、信玄の顔は苦痛に歪んでいる。
佐助「しっかりしてください!信玄様」
信玄の胸からヒューヒューと異音がして、謙信と佐助はもう時がないのだと察した。
謙信「……っ!愚か者。このような名もなき野で息絶えるな。
俺と真っ向勝負して、負けてから死ねっ」
二色の瞳に近しい者を失う苦痛が浮かぶ。
ようやく咳が止まり、信玄が野にごろりと寝ころんだ。
息苦しそうに胸が大きく上下している。
信玄「俺は……ここまでだ」
口元を血で汚したまま目を閉じる信玄は、そのまま旅立ってしまいそうな儚い姿だった。
佐助「信玄様っ!」
謙信「信玄!起きろっ!」
二人の呼びかけに答え、信玄が薄っすらと目を開けた。
信玄「俺を置いて二人で行け。ワームホールが無事に500年後に届けてくれるとは限らんだろ。
不測の事態に備えて身軽になっておいたほうがいい」
佐助「身軽って……っ。そんなふうに言わないでください」
信玄「俺が軽いとでもいうのか?いいから二人で行け。
謙信、姫と必ず再会しろよ。お前には姫が必要だ」
謙信「信玄、貴様とてあいつのことを……
謙信が何か言いかけた時、空がゴロゴロ鳴り突如大きな雷が落ちてきた。
近くの大木に落ちたそれは真っ二つに幹を裂き、燃え上がらせた。
ぽつ………ぽつ……ぽつ………サーー