第25章 3人で…
佐助「……珍しく謙信様が反省している…」
謙信「何か言ったか?」
鋭い視線で咎めてくる姿は以前にはよく見られたものだったが、ここ半年はなりを潜めていた。
以前の姿を取り戻しつつある謙信に、佐助は内心感動していた。
佐助「いえ、何も言っていません。
俺が仕えると決めた人は謙信様だけですから苦労も何もありませんよ。
それに俺も舞さんにもう一度会いたかっただけです」
謙信「部下であり、舞を想っていた男でもあったな…。
今度ばかりはお前以上に頼りになる男はいなかった。4年前、あの戦場で佐助に出会ったのは佐助風に言えば『運命』だったのかもしれぬな」
薄く笑った謙信だったが、すぐに顔を引き締めた。
時がない。
佐助「何か持っていきたいものがあれば今のうちにまとめてください」
謙信「特に持っていくものはない。いや、あるな。
それに一通だけ文を書きたい。
佐助、先に外で待っていろ。馬は3頭だ」
佐助は『やっぱり』といった顔で口の端を持ち上げた。