第25章 3人で…
(頭にずっとかかっていた靄(かすみ)が晴れていくようだ…)
モヤモヤと思考を鈍らせていた何かが突如なくなり、意識が冴え渡った。
息を吸えば肺の奥にまで新鮮な空気が入り込み、身体の末端にまで酸素が行き届いた。
血の管をゆるゆる流れていた血液が一気に流れを加速させ身体中を駆け巡る。
謙信「っ」
灰色だった世界が突然色づいた。
薄暗い部屋だというのに謙信には鮮やかに映り、眩暈がするようだった。
謙信「なんと単純な男だ…」
再会できるかもしれない。
そんなとびきり級の活(かつ)に謙信の身体が目を覚ました。
佐助「人というのは根本的には単純な生き物ですよ、謙信様。
引き裂かれた運命の相手に会えるんですから、それこそ本能が求めるんです。
単純に反応するのは道理です」
佐助は謙信に足袋を差し出しながら珍しく笑った。
何となくではなく、明らかに笑っている表情をした。
珍しい出来事に謙信が目を瞠(みは)った。
佐助「ある可能性に賭けて500年後の舞さんにメッセージを送ったんです。
1%を99%に近づけるために」
佐助は正気を取り戻した謙信に、事の真相を説明した。
佐助「そうしたら今夜のワームホール出現率は100%です。
100%とは『確実に発生する』という意味です。ありえない数値です。
…舞さんがあちらで謙信様を呼んでるんです。行きましょう」
やつれた顔にみるみる生気が蘇った。
謙信「っ、此度の件、礼を言う。俺が木偶の坊に成り下がっている間に苦労をかけた。
俺が半ば諦めていた1%の可能性を信じ、よくやってくれた」
不甲斐なかったと眉間に皺を寄せ、心なしか肩を落としている。