第2章 夜を忍ぶ
巡回1「先ほど水音を聞いたもので、不審に思い探っているところです」
三成「…そうですか。念のために土手を降りて確認してみてください。
この橋は城へと続いています。少しでも不審に思ったなら確認してください」
巡回2「はっ!」
耳を覆われていても聞こえた会話に焦った。
謙信様の腕が解け、刀の柄に手をやる気配がした。
ヒヤリとした殺気が謙信様を包む。
(どうしよう!?このままじゃ三成君と鉢合わせしちゃう!)
謙信様が降りてきた人達と刀を交えたら、必然的に三成君と謙信様は顔を合わせてしまう。
そんな状況は絶対避けたいのに、打つ手が浮かばない。
その時、橋下の真っ暗闇で小さな影が動いた。
(ん?)
なんだろうと見ていると、松明の光をはね返す目が二つ。
それはしなやかな動きで土手を歩いていき、ぴょんと飛び上がり橋の上へと姿を消した。
『ニャーン』という可愛らしい声がすると、橋の上の気配が和らいだのを感じた。
三成「ああ、犯人はあなたでしたか。フフ、猫さんかと思いましたが、あなたは毛色が違いますね」
三成君と会話するように『ニャン』と声がした。
巡回3「まったく人騒がせな猫ですな」
巡回1「本当に。では巡回に戻ります」
二手に分かれた足音が遠ざかっていった。
(た、助かった。偶然猫が居て良かった!)
安堵の息をつくと、刀の柄から手を離した謙信様から『行くぞ』と促される。
無事に橋を渡り終えて道を進んでいくと、やがて古い長屋へたどり着いた。
謙信「あの門をくぐり、左の角を曲がって7件目が隠れ家だ…っ、走れ!!」
説明を聞いている時に突然背中を押された。
(え?何?)
訳も分からず走り出すと謙信様が後ろをついてくる。
角を曲がる瞬間、視界の隅に松明の明かりが見えた。
(巡回だ!!)
思いっきり駆けた。