第23章 1%を100%に
(佐助目線)
幸村「佐助。入るぞー」
佐助「幸村か。どうぞ」
手を止めて幸村を部屋に招いた。
城の中はシンと静まり、ワームホールの計算をしている間に時が過ぎたようだった。
部屋に戻ったのは夕方だったから、かれこれ6,7時間は計算に没頭していたことになる。
部屋に入ってきた幸村は、俺の机の周りを見て眉をひそめた。
星の観測データを記録したものや、ワームホール発生確率を計算した紙が乱雑に散らばったままだった。
幸村「すっげぇ量だな。わーむほーるってやつは開きそうか?」
幸村は手に持っていたお盆から湯呑とおにぎりが乗ったお皿を差し出してくれた。
ホカホカと湯気が立っている。
(こんな夜中にご飯を炊いてくれたのか?)
幸村の心遣いに感動した。
佐助「ありがとう、幸村。いただくよ。
ワームホールは残念ながら開く兆候は見られない」
相変わらず発生確率は低い。酷い日は0.02%まで下がってしまうくらいだ。
たった一日だけ10%まで上がったので期待したが、その日限りだった。
希望がないわけじゃないが限りなく『ない』に近い。
肩を落としたまま、おにぎりを頬張る。
丁度よい塩加減に酸っぱい味が口に広がる。
佐助「幸村、このおにぎりの具はもしや…」
心当たりがあるその味を幸村に問うと、
幸村「お、流石!謙信様のお気に入りを失敬したんだ。たまに良いだろう?
謙信様があの調子じゃ、梅干しの1個や2個、減っても気づかねえだろ」
佐助「……」
俺は視線を落とし、口の中のおにぎりを噛んだ。