第23章 1%を100%に
(第三者目線)
舞が姿を消してから数か月後。
満開だった桜が散り始めたある日、謙信は大広間に佐助を呼びつけ一枚の地図を見せた。
謙信「佐助、500年後にこの寺はあるか?」
佐助は指差された場所を見て首を振る。
佐助「すみません、謙信様。500年後の安土の寺院は詳しくないのでわかりません」
謙信様が力なく視線を落とした。
謙信「そうか。舞と酒を飲み交わした帰り、この寺で一時休み語らった。
今は廃寺になっている故、建て直そうかと思う」
謙信は地図を脇に置いて物憂げに瞳を伏せた。その横顔は青白い。
舞が居なくなってからというもの、脱力したように生気のない顔をしている。
謙信「あの長屋も、宿も500年後には無いだろう。寺なら残る可能性があるかと思ってな。
舞が俺を想ってくれているなら気づいてくれるやもしれぬと…」
謙信の目が開け放たれた襖の向こうへむけられた。
風のないうららかな日和だ。桜の花がひらひらと輝きながらゆっくりと散っていく。
本来であれば今頃、舞を正室として春日山城に迎えるはずだった。
桜の美しさに負けない花嫁姿になっただろう。
謙信はやるせない思いで瞳を閉じた。
佐助「そうですね。建設にあたって俺に手伝えることがあったら言ってください」
佐助は謙信の心中を察し協力を申し出た。
謙信「この地は安土だ。寺の建設にあたって信長の許可をとった」
佐助「さすが謙信様、仕事が早いですね」
謙信は信長からの文を佐助に見せた。それにはいくつかの条件が書かれていた。
・佐助を安土に寄こすように
・寺を建てたのが誰かわからないようにすること
・戦の際はこの寺は不可侵とすること
その他にもあったが大きな条件はこの3つだった。