第23章 1%を100%に
あれほど舞の国はどこだと疑問に思っていたにもかかわらず、国へ帰らないと言われて、そのことを後回しにした。
お前が抱えていた『誰にも言えない秘密』がかように…想像の遥かかなた上をいくものとは…
強い舞が怖がっていたもの
過去を変え、未来を変える
些細な出来事が500年のうちに大きく化けるかもしれない恐ろしさ
佐助がこの地上において誰もが持ちえない秘密だと言っていたのは誇張ではなく真実であった。
さぞかし怖かったであろう…
どれほどの不安と恐ろしさを飲みこんで俺の手を取ってくれたか……
気づいてやれなかった
『お前が知っていた俺』は生涯不犯を貫き、妻も子も居なかったのだな。
子ができても良いと言った時、お前はどこか戸惑い恐れていた。
居るはずのない人間が産まれ出れば、500年先にどう影響するか…。
あの時のお前の気持ちを思うと己の愚かさを悔やむばかりだ。
身体を合わせる前に、お前の話を聞いてやらなければいけなかった
秘密を理解し、分け合い、支えてやらねばならなかったのだ
舞、すまなかった
それだけではない
臥せって何も口にできずにいたとは露とも知らず、何も、本当に何もしてやらなかった
睦月の終わりから寝込んでいたならワームホールが開くまでのひと月近く、お前は苦しんだのだろう?
文ひとつ届けられず、舞の病も察してやらず、傍に居ることも出来なかった…
時を越えて行ってしまったお前には、許してくれと請(こ)うこともできない
舞
代わりなど居ないかけがえのない存在を、気の迷いで忘れられるはずがないだろう?
お前の文は愛の言葉ひとつ書かれていなかった。
だが読み解く鍵のひとつひとつに、俺達の過ごした時間、交わした言葉が使われていた。
お前は俺と過ごした日々を、言葉を、愛しく思ってくれたのであろう。
事実だけ述べ、俺の傷が浅く済むように…あの文には舞からの愛が至るところに散りばめられていた
己を愚かだと罵しりながら想いは募るばかりだ。
お前の望みなら何でも叶えてやるが、忘れてくれという望みは叶えてやれない
お前を離してやれない
お前から離れられない
愛してるんだ、舞…
お前の傍に……行きたい