第22章 真夜中のチャイム
信玄「城に居た頃は佐助や幸村が懸命に謙信に付き添い、無理やり食べ物を口にいれて水を飲ませ、布団に寝かせていたそうだ。
佐助は合間にワームホールが開く場所や時間の計算をして……謙信を生かすために必至に動いていた。
佐助は君と同郷ということで信長達に狙われてな。
大事な時期に安土に連れて行かれては困ると警備を強め、春日山城に押し込められたんだ。
謙信が別邸に移ってからは佐助はワームホールにかかりっきりだと三つ者が報告してきた。
時折幸村ともやり取りしていたらしいが詳しい話は聞いてない。
……俺が死ぬか、謙信が死ぬか…どっちが先に死んでもおかしくない状態だったんだ。
そんなおり夜寝ていたら……たたき起こされたんだ」
どっちが先かだなんて聞くのが辛くなってきた時、信玄様は何かを思い出して笑みを浮かばせた。
信玄「死人同然だった謙信が、明かりもつけない部屋の中で刀を抜いて立っていたんだ。
『ワームホールが開く。先の世でお前の病は治せるやもしれぬ。命が燃え尽きる代物なら灰になるまで燃えて見せろ』って無茶苦茶言いやがって。
とにかくワームホールが発生するまで時がないと刀で脅されて、着の身着のままといった状態で短い文を残して出てきたんだ」
「そ、それはまた恐ろしい思いをしましたね…」
現代人の私からすれば寝起きに刀を突き付けられたら震えあがってしまうんだろうけど…信玄様はなんだか嬉しそうに笑っている。
信玄「いつもなら『何考えてんだ』って言うところだろうけど、それまでの謙信を見ていたからな…。
正直、刀を持って自力で立っている姿を見たら嬉しかったよ」
信玄様につられて私も笑った。