第22章 真夜中のチャイム
「信玄様は私の素性を知った上でこちらに来たんですか?」
信玄「ああ。君の手紙が謙信に届いた時に居合わせたんだ。
暗号を読み解く手伝いをしたし、佐助と一緒に本能寺跡からタイムスリップしてきたっていうのも聞いた。
君が俺の病を知っていた理由や中立の立場にいる気がしたのも全部納得できたよ」
信玄様はもう一口お茶を飲んで湯呑を置いた。
信玄「俺はワームホールが開くと言われた場所に着いた時、持病で虫の息だった」
「え?」
驚いて目の前の信玄様を見る。
謙信様や佐助君を軽々持ち上げていたし、咳き込む様子もないので信じられなかった。
でも気をつけて見れば、脱いで畳んだ着物のあちこちに点々と血の染みがある。
信玄「今は久しぶりに体調が落ち着いている。
ワームホールの発生地点で倒れた時『俺を置いて二人で行け』って言ったんだがな……謙信は『どうせ死ぬならもう少し生きていられるだろう』って言うんだ。おかしいだろう?
謙信だって死にそうなくらい弱っていたくせに強がりやがって…。
ワームホールの中で謙信と佐助が守ってくれた。
だからこうして俺は目を覚ましていられる。
ワームホールの中で発生していた小さな光に当たったら痺れるような衝撃を受けたんだ。
だがそんなに強くはなかったからこの二人も大丈夫だろうと思う。
二人共疲労困憊だったからな。しばらく目を覚まさないだろう」
(死んだように寝てるってことかな?)
病院へ連れて行くのはやめにして少し待つ事にした。
「謙信様は信玄様に生きて欲しかったんですね。
相変わらず無茶なことをおっしゃったようですけど。フフ」
二人の間にはいつも深い絆のようなものを感じる。
信玄様はご自分の胸にそっと手を置いた。
信玄「君が安土を去ったと聞いてすぐの頃、急に病が酷くなったんだ。
一度咳き込むと、これがなかなか止まらないんだ。血を吐く回数も量も増えてな。
それを隠すために越後の山奥にある別邸に移させてもらって療養していた。
だから知らなかったんだよ。謙信があんな状態になっているなんてな」