第22章 真夜中のチャイム
リビング、廊下、仏間、奥の和室、と駆け足で進む。
電気をつけると暗闇に慣れた目がチカチカした。
用意しておいた3人分の布団を敷いてすぐに車で迎えに行った。
信玄様は初めて見た車に内心びっくりしていただろうけど、そんな事はおくびにもださず二人を運び入れてくれた。
後部座席に二人を乗せ、信玄様は助手席に乗ってもらった。
去り際にもう一度沢田さんにお礼を言って運転席に座る。
ドアを閉めてシートベルトをしている間に自動でドアがロックされた。
信玄「っ」
その音に信玄様が一瞬ピクリとしたので安心させるために言った。
「安心してください。防犯上、自動で車の鍵がかかるようになっているんです。では動かしますね」
信玄「自動…?じどう…自分で…動くってことか。
ひとりでに鍵がかかるなんて500年後ってのは凄いんだな。
突然ですまないが、よろしく頼む」
「はい」
ボタンを押してエンジンを掛け、アクセルを踏むと車が動き出した。
方向転換のために一度バックしてから、ハンドルを切りかえして家へ向かう。
それを隣で見ていた信玄様は感心したように口を開いた。
信玄「佐助から『車』の話を聞いていたが想像以上だ。
姫が動かしているところを見させてもらっても良いか?」
それから家に着くまで穴が開くんじゃないかと思う程じっと見られて、私はいたたまれない思いをした。
「し、信玄様、着きましたよ」
エンジンを切るとやっと信玄様の視線から解放された。
目と鼻の先の距離だったというのに、どっと疲れてしまった。
信玄「へぇ、後ろに動く時はピーピー音が鳴るのは警告音ってところか。
そこを動かせば車の前後の動きをかえられるんだな」
好奇心旺盛に、でも的確に理解してシフトレバーを見ている。
(鉄の塊が動いてるんだもん、不思議だよね)