第20章 上田城の石碑
『…この話は上杉謙信の生涯と重なる部分があるとされ、彼の最期について新しい発見があるのではないかと期待されている』
サラリと記事は終わっていた。
炊飯器がピーピーと鳴っている音が妙に遠く聞こえた。
スマホを持つ手が震える。
(え……これって、どういう事?)
今まで頑なに調べようとしなかったワードを打ち込んで検索する。
『上杉謙信』『生涯』
この二つを打ち込むと、たくさんの検索結果が表示された。
その中から適当に選んで読み進めた。
『上杉謙信は1578年の戦の最中、突然死したとされているが、実は生きていたのではないかという伝説が残っている。
しかし1578年以降、大きな戦いの舞台には立っておらず、また国内の政策についても後を継いだ上杉景勝が執り行っており、生存説は真偽不明。
女性関係においては、人質として春日山城に来た伊勢姫と恋仲になったが家臣達の手によって強引に引き裂かれたという出来事があった。
その経緯もあってか、謙信は『正室として迎えたい女がいる』と家臣達を説き伏せたことがあり、家臣達が満場一致でその申し出を受けたが、突然その話は立ち消えとなり謙信は正室を迎えなかったといわれている。
その女性が誰だったのかは記録に残っていない。
最期については、小用で出かけると言い残しそのまま帰らなかったと景勝の手記に書かれている。
謙信の部屋は整えられ、戻らない覚悟で出かけて行ったとされる。
家臣達が周辺各国を数年に渡って探し回ったが足取りは全く掴めめず、正式な没年月日はわかっていない』
「なにこれ、嘘でしょ。謙信様っ…」
幸村の城から出てきた石碑のお伽話と、歴史に残っている謙信様の記録。
それらを総合して考えると、謙信様は私を追って『光の道』つまりワームホールを目指したことになる。
それなのに謙信様は私の元へは来ていない。
「どこへ行ってしまったの?」
スマホを手に座り込んでいると寝室のドアが開く音がして二人が階段を降りてきた。
「「ママー、おはよー」」
「ゆり、たつき、おはよう」
今日も元気いっぱいに起きてきた二人を見て、後ろ髪を引かれつつ朝の準備を続けたのだった。