第20章 上田城の石碑
『石碑は明治初期、上田城の石垣近くの土中から厳重に布にまかれた状態で発見された。
発掘隊が石碑の内容を簡単に記録した後、専門家を呼びに行っている間に盗まれ行方不明となる。
先月、国内の骨董オークションに出品されているのを見つけた収集家が競り落とし、知り合いの鑑定士に鑑定を依頼したところ本物ではないかと言われたという。
そのあとは詳しい専門家の元へ運び込み、現在調査中』
その下に石碑の内容を訳したものが載っていた。
『生涯の友の依頼により、これを作成する。天女へ届くことを願う』
『昔々あるところに龍が治める国がありました。
その龍は気性が荒く、いつも戦を求めていました。
龍の国に敵国が踏み入ろうものならば龍は嬉々として軍を率い領地を駆け巡りました。
その目で睨みつけられたものは途端に体が震えて動けなくなり、鋭い爪は一振りで何百もの兵を切り裂きました。
勝利の咆哮は近隣諸国にまで響き渡り、周辺国からは恐れられていました。
戦に出れば完全無敵。
政もこなし国の者達に慕われていた龍でしたが、心には深い傷を持っていました。
その傷は見えない鎖となって龍の心を捕えていました。
心は渇き、酷く苦しいと自覚していながら龍はどうすることもできず日々を送っていました…………