第20章 上田城の石碑
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「ゆり―!たつきー!」
保育園のフェンス越しに二人の姿をみつけて手を振った。
「「ママー!!」」
「お迎えに来たよ!」
「「はーい」」
二人共タタッと駆けて建物の中に入っていく。
たつきとゆりは4歳になった。
この間までフニャフニャの赤ちゃんだと思っていたら元気に走り回るようになっている。
玄関から先生と一緒に出てきた二人の手には、それぞれ可愛らしい笹飾りがあって、ピンクやブルーの短冊が揺れている。
「こんにちは!そういえば七夕なんですね」
先生「ええ!ゆりちゃんもたつき君も一生懸命作っていましたよ」
「ふふっ。家に帰ったら早速飾りますね。ありがとうございました。
ゆり、たつき。先生にさようならしてね」
「「さようなら!」」
先生「さようなら、明日も元気に来てね」
「「はーい!」」
「さ、帰ろうっ!今夜はたつきが好きなサバの塩焼きだよ!」
たつき「やったー!」
ゆり「えー。ゆり、お肉が良かったな~」
「はいはい、明日はお肉にするから頑張って食べてね。
お魚を食べると骨がカチンコチンになるからね」
二人を車に乗せて家へ向かう。
後部座席では、お互いが笹飾りを見せ合いっこしている。
「そういえば七夕のお願い事は何にしたの?」
たつき「えーと、ママと結鈴を守れるように強くなりたいでしょ。
あとはパパが早く帰ってきますように」
ゆり「私もー!パパのお仕事が早く終わりますようにって書いたよ。あと、お姫様になりたいって書いた!」
「……なんで二個ずつお願いしてんの?お願い事は1個だけなんだよ」
ゆり・たつき「「いーの!」」
二人には『パパはとても遠いところでお仕事をしている』と言ってあった。
現代に帰ってきてから4年以上経つのに、まだ謙信様を『すでに亡くなっている人』にはしていなかった。
時間の流れは違うけど、500年前のあの時間を謙信様は生きていると信じていた。