第19章 謙信様の手紙
愛の言葉で文は終わっていた。
文を持つ手がぶるぶると震えた。
「ぅ……謙信様っ!謙信様、ごめんなさい!
一人にしてしまって……ごめんなさいっ」
平仮名と漢字がきっちりとした楷書で書かれている文。
それを胸に抱いて謝った。
脆くなっていた文の端っこが崩れて畳にハラリと落ちた。
謙信様はとても強いから私が居なくなっても一時は悲しんでくれても立ち直ってくれると思っていた。
でも間違っていた。
(こんなにも深く愛してくださっていたなんて!)
たつき「うー?」
ゆり「んー?」
二人の声が間近く聞こえて背中をパシパシ叩かれた。
1歳にも満たないけれど、私が泣いているのを訝しんでいるのだろう。
「たつき、ゆり。どうしよう、ママ、どうしたら良いんだろう」
先の世にいる私は謙信様に何か伝えることはできない。
こうして謙信様の行く末を想って泣く事しかできない。
謙信様は500年の時をかけて深い愛を伝えてくれたのに。
キョトンとしていた二人は、泣いている私につられて泣き始めてしまった。
泣きながら二人をあやそうとしているとご住職がゆりをだっこしてくれた。
私はたつきをだっこしてあやす。
「よしよし、ごめんね。ママも泣き止まなきゃね」
鼻をスンと鳴らしながらたつきに笑いかける…多分酷い顔をしていると思うけど。
ご住職は慣れた手つきであやしてくれて、ゆりはすでに泣き止んでいる。
住職「もし差し支(つか)えなければ、お話をきかせてもらえませんか?
その…お話しづらければもちろん無理にとは言いませんので」
「はい」
ご住職の人柄が信用できるからというのもあるけれど、たった一人で抱え込んでいるのが辛くなり、本能寺跡でタイムスリップした時から今日までの事を話した。