第19章 謙信様の手紙
『その鈴は、とある男が幼い日に世話になった僧から貰い受けたもの。
姫に鈴の由来を確認した上で箱を渡すように』
私とご住職の視線がパチリと合った。
住職は緊張した面持ちで包みを取ると恭(うやうや)しく私に差し出した。
住職「代々この寺の住職はこの箱を秘密裏に守って参りました。
寺に調査が入ってもこの小箱については『とうに姫は現れたようで、ここにはない』ということで通してきたそうです。
どうぞお受け取りください。
まさか私の代でこのお勤めを果たす事になろうとは思ってもおりませんでした」
ご住職と箱を交互に見る。
「そんな大切なものを私が受け取って良いのでしょうか」
きっと謙信様からのメッセージが中にある。
確信めいたものを感じるけど500年という長い間、このお寺の方達に守られてきたという事実。
そんな大層な事をしてもらってと気後れしてしまった。
住職「あなた以外は開けてはいけないものです。どうぞ…姫様」
『姫様』そう呼ばれていた安土での記憶が蘇る。
けれど『一国の姫』の意味は…越後の姫だ。
あのまま春を迎えられたなら越後へ行き、謙信様の元で愛し愛されるはずだった未来。
喉がコクリと鳴った。
覚悟を持ってその箱を受け取った。
「あ、開けます」
丁寧に封を解いていく。
紐を解き紙を取り去り、また紐を解き、布を解き、やっと本体が見えた。
手荒く封を解けばすぐだったろうけど、500年守れてきた物を乱雑に扱うのは憚(はばか)れた。
「……」
封を解いてみれば、現れた箱はとても小さいものだった。
緊張で汗ばんでしまった手で箱を開ける。
ご住職は気を利かせて、たつきとゆりを少し離れた場所で見てくれている。