第19章 謙信様の手紙
「うぅ…」
誰にも分らない。
私にだけ伝わるように造られていた。
涙が次々溢れて…止まらない。
(謙信様…)
500年の時を経て届いた謙信様の想い。
一緒に過ごしたのはほんの数日だったのに
想いを交わしたのはたった一日だけだったのに
(こんな風に形にして残してくれる程、私を愛してくれていたんだ)
私との思い出っていうのもあるけど、もしかしたら願いでもあるのかもしれない。
『手の届くところに居ろ。俺の傍が一番安全だ』
「ふっ……」
そんなふうに言いそうな謙信様を想像して少し泣き笑いになってしまった。
ハンカチで涙をぬぐっていると、ご住職が酷く動揺して声をあげた。
鈴に釘付けになっている。
(?)
住職「鉄紺と漆黒の組紐…木製の鈴…」
「あの、これが何か…?」
問いかけると、ご住職は急に真剣な顔をしてこう言った。
住職「あなたにお渡ししたいものがございます」