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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第19章 謙信様の手紙


住職「この龍が守っているのはウサギです。手に何か持っていますが、それが何かは未だにわかっておりません。
 明治の頃より何度か歴史に詳しい方達がきて調べていますが、どうして龍がウサギを守っているのか、なんの逸話もなく作者も不明で謎が多い作品です。

 龍は寝ていると見せかけて、目が開いているんですよ」


そう言われてみれば確かに目が開いている。
糸のように細く…。



その龍の目には色があった。



「あ…っ」


咄嗟に両手で口を覆った。
そんな私を見て住職が言った。


住職「目の色が違うでしょう?この寺に残された古い記録簿に再建当初の様子が書かれていて、こう書いてあったんです」


住職が記憶を辿るように遠い目をした。


「『龍の目。左は氷のように透き通った白藍(しらあい)、右目は日に透けるような若菜色』。
 昭和の頃、その文献を参考にして修繕されました」


私は茫然とその目を見つめる。


(謙信様だ。そして、この兎は……私?)



『お前はどことなく兎に似ている。こうして撫でると、少し震えるところが』

『ずっとお前の寝顔を見ていた。愛らしくて眠るのが惜しい…さっきのは寝たふりだ』

『これは幼少の頃に世話になった住職から貰ったものだ。持っていろ』



(兎が持っているのは…………鈴……)



『愛している。この命尽きるまで』



安土城で一緒に寝た夜、夢現(ゆめうつつ)で聞いた謙信様の最後の言葉が聞こえたような気がした。


「っ……!」


こらえきれずに涙が溢れた。


住職「おや、どうしました?」


涙が溢れて流れ落ちる。
身体が震えたせいで、ゆりが「んー、んー?」と足をバタバタさせた。

急に泣き出したのでご住職が心配そうに見ている。


「す、すみません。ちょっと思うところがあって…」


ベビーカーの下にある荷物入れからバッグをとった。
その中から謙信様に貰った鈴を取り出す。

悪阻で寝込んでいる時も、入院中も、出産の時も、ずっと、ずっと私と一緒にあったもの。



からん



小さく乾いた音が鳴る。


(謙信様がここを建てられたのですね)


龍に守られたウサギは安心して眠っている…。


龍は綺麗に輝く瞳でそれを眺めながら、体を休めている。


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