第19章 謙信様の手紙
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「こんにちは!」
境内を掃除しているご住職をみつけて声をかけた。
救急車を呼んでもらったあの日から1年以上経っていたけれど、私を覚えていてくれたようでにこりと笑ってくれた。
ゆりを抱っこ紐でおんぶし熟睡中のたつきはベビーカーに乗せて歩み寄った。
住職「いやぁ、あれからどうなったかとずっと心配していたんですよ。
こんな可愛い子が2人も!本当に良かったですね!」
ご住職は孫でも見るかの勢いで破顔している。
「水崎 舞と申します。あの時はご迷惑をおかけしてすみませんでした。
ありがとうございます」
視線を落とすとたつきの寝顔が目に入った。
「私だけでなく、この子達の命も助けて頂きました。
あの時お水をいただかなければ脱水症状で治療が間に合わなかったかもしれないと言われたんです。
本当にありがとうございました」
あの時ご住職が掃除で外にいなければ
助けを呼ぶ声に気が付いてくれなかったら
水を飲むかと提案してくれなかったら
私達3人は、ここに居ない。
ご住職は『いやいや、当たり前のことをしたまでですよ』と照れたように笑った。
「今日はお礼をお伝えしたかったのと、ここを見学させてもらいたくて来たんです。
ネットにも情報はあったんですけどこの目でどうしても見たくて」
ご住職はそれならと言って掃除用具を脇において案内してくれた。
住職「この寺はそんなに大きくないので見学と言ってもすぐ終わってしまいますが、どうぞ」
「できれば水場から見たいのですがいいですか?
あの時ここのお水に助けられたので」
住職「かまわないですよ。では、あちらへ」
ゆりが目を覚まし背中の方で「んー、あー」と言っている。
「よしよし…」
あやしながら住職の後について行くと、ネットで見た通りの水場が見えてきた。