第19章 謙信様の手紙
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ナビに従ってお寺の近くまでやって来た。
当たり前だけど安土城はなくて、私が着物姿で歩いた城下町は面影さえない。
ネットの地図で確認したところ、謙信様とお酒を飲んだ茶屋のあたりはビルが建ち、信長様達とお別れしたあの雪原も住宅地になっていた。
謙信様と過ごした長屋や想いを通じ合わせた宿は……道路になっていた。
いつの間にか唇を噛み、眉間に皺が寄っていた。
(いつかちゃんと思い出にできるかな)
まだ懐かしく思える程、時間は経っていない。
胸が締め付けられるように苦しいのはまだ当分続きそうだ。
もう一度バックミラーで子供達を確認してから寺へ続く坂道を車で駆け上がった。