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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第18章 あなたとの約束


「謙信様…」


その名前を口にすれば気持ちが奮い立つような気がした。


(自分の命とお腹の命を救うため…諦めちゃいけない。
 この子はまだ生きてる)


ぎゅっと握りしめた手に玉砂利が触れた。


「っだ、誰か!誰か居ませんか!?」


必死に絞り出した声が先ほどより大きく響いたけど、その代償としてお腹に鋭い痛みが走った。


「痛っ……」


ここは無人の寺なのだろうかと絶望したその時……

建物の奥から作務衣姿の男の人が箒とチリトリを持って現れた。

私を見て慌てて駆け寄ってきた。


男「声が聞こえたような気がして来てみたが…どうしましたか!?」


声をかけてくれた人は60代くらいで頭を丸めていた。ご住職なのだろうか。

震える声で助けを求めた。


「お願いします。救急車を…」


ただならぬ気配にその人はポケットからスマホを取り出して耳に当てた。
その様子を見ながら地面に寝そべった。

もう手をついて体を支えるのも億劫だ。

今できるのは『意識して息をする』だけだ。
意識しないと止まりそうになるそれを、必死に行う。


男「しっかりしなさい。少し話せますか!?」

「…はい」


スマホを耳にあてられた。電話口の女性が私の状態を聞いてきた。
目を閉じ寝そべったままの状態でゆっくりと答える。

その内容を傍で聞いていた男の人は『なんでそんな状態でここに居るのか?」と顔を青くしている。

やがて通話を終え救急車の到着を待った。
動くと危険だと言われそのままの場所で待つ。


幸い寺を訪ねてくる人は居ない。


うっすらと目をあけると、木々は緑の葉を繁らせ濡れてしっとりとしている。
アジサイがたくさん植えられていて、こんな状態でなければ、その美しい色合いを楽しめただろう。


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